旧作のかたち
新劇のかたち
・多くの人が言及しているように、
『シンエヴァ』が描き伝えようとしたテーマ自体の根本は、旧作と同じだと思います。 楽屋オチに波打ち際に原画カットと
旧作を踏まえた演出が多くて、そういう意味でも
総決算を意識している姿勢が伝わってきました。
・旧作と比べて
表現方法というか伝え方が昔に比べて解り易くて口調も優しくなったなぁと言うか、「半分有る」を
「もう半分しかない」と言うか「まだ半分ある」と言うかの違い、みたいな感じ?
・ 思えば旧作は、庵野先生が
「答えは教えた。解き方は今までの授業で教えた内容から考えれば辿り着けるから」と
卒業前に急にクラスを解散させてしまったので
生徒の多くは途方に暮れてしまったワケですが、今回は間違いなく
卒業証書を渡そうとする姿勢が伝わってきました。
「今更受け取れるかよっ!」と言う人の気持ちも解らないことはないですが。
・『EOE』みたいに
「アニメ見てないで現実に帰れ!」と冷や水ぶっかけるのではなく、
「アニメもいいけど現実もいいよ」という
正月のククレカレーのCMみたいな言い方になったのは、時間と経験を経て庵野の価値観や見方に変化があったってことで間違いでしょうけど、それにしても色んなところで
「結婚したから〜」「嫁の存在が〜」と私生活前提で語られるというのは何たる恥辱プレイ。
日本最大規模の私小説とは良く言ったものですな。
・そもそもエヴァって「人類の敵と戦うロボットアクション」「知的好奇心をくすぐる数々の設定と謎」「斬新で驚きに満ちたストーリーと演出」「一筋縄では行かない魅力的なキャラ達と彼らを取り巻く人間ドラマ」等々の様々な魅力ある要素を持ったエンタメで、それらが複雑に絡み合った物語に多くの人が惹き込まれた結果、長い長い旅路の果てに、今日に至ったワケです。
・ただし、惹き込まれ過ぎてプラグ深度限界オーバーして四半世紀もエヴァの呪縛に囚われたインフィニティの成り損ない(庵野含む)が大量に発生してしまったのも事実ですが、その沼の掻い掘りしても誰も楽しくない結果になりそうなのでのでそっとしておくのが大人の対応(自己防衛)。
・一口に「エヴァが好き」と言っても、何の要素がどれだけ好きかの割合は人それぞれでしょう。ロボットアニメとして気に入ってる人もいれば、綾波とアスカ(或いはカヲル)に魂を囚われた人もいるでしょうし、第弐拾伍話と最終話の「自己啓発セミナー」こそエヴァだと思う人だって居るはずです。
・私の場合、エヴァが好きな気持ちの中で、アニメーションとしてのエンターテイメントの楽しさに結構な比重があって、思わせぶりな用語や演出はあくまで「ほほぅ…?」程度のスパイスで、後で調べてた結果より深みが出て面白くなったら尚良しって感覚の距離感で楽しんでると、『シンエヴァ』を観た上で他の話を観返して改めて思った次第です。…こんな拗らせた長文描いてる時点で説得力がまるでありませんが、一応自己申告ではそのくらいのスタンスのつもりです。
・個人的な好みを言うと、旧作では第八話が一番好きです。アスカ派ってのもありますが、新ヒロイン登場からラストの引きまでのワクワクする流れ、エヴァらしい演出(+良作画)が効いた弐号機の数々のアクション、お馴染みのBGMに乗せて戦艦と協力したリミットバトルで最後の覚醒と、真っ当なエンタメ度とエヴァっぽさ度が一番バランス良く楽しめる話だと思います。
・活動限界や海に落ちたら身動き取れない等のピンチが、話と映像を盛り上げる演出になってるのもお見事。海上に落ちれないから船の上をジャンプして飛び回る巨大ロボットって、当時は本当に斬新で驚いたし、今見てもやっぱり面白い。プログナイフのポーズは皆カッター持ったら一度はやってるはず。
・新劇場版だと、一番はやっぱり『序』の無茶変形ラミエルとの総力戦(+BGM)だし、『破』の「緊急コース形成」なんかも「うわぁそう来たか」って感じでお気に入りです。後、旧作にしろ『破』にしろ、ゼルエル戦の覚醒の「何か凄いことになってるぞ」な一連の流れもやっぱり外せない。
・逆に、『EOE』の巨大綾波とか、『Q』のフォースインパクト発動後の戦闘や、『シンエヴァ』のパリ市街戦やアスカとマリがイナゴの群れを蹴散らすあたりは、「皆が驚く映像を作ろうとし過ぎてちょっと空回りしてる」感を覚えてしまい、あまりお気に召しませんでしたごめんなさい。フィクションはリアリティとハッタリの塩梅が肝心なのであんまりにもあんまりだと冷めてしまうのですが、そこの匙加減も人それぞれだと思うので、エンタメって難しいですな。でも、「素敵な歌に乗せて首の無い白い裸体が隊列を組んで優雅に歩行する」なんて、確かに誰も想像すらしたことないだろうけど、誰が見たいと思うんだよ。
・TV版最終話の「学園エヴァ」に多大な反響があって、結果大量のスピンオフシリーズが生まれた事実からも、各キャラクターの魅力を含めたそういうエンタメ的な要素が「エヴァに求めるモノ」として多くの人の需要があったってことなんでしょう。あと、結局皆辛いのはあんまり好きじゃないし。
・『エヴァ』は
庵野秀明の作家性が大きくフォーカスされますが、元々は『ナウシカ』の巨神兵や『王立宇宙軍』の発射シーン等の、
映像エンタメ力が評価された人ですから、エヴァの呪縛も解けたことでしょうし、
もっと映像エンタメを堪能出来るエヴァを作ってくれたら嬉しいなぁと思う次第です。
序文
旧劇について
新劇場版について
綾波について
アスカについて
ミサトについて
音楽について
最後に
オマケ
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